現役医師によるドナネマブの保険適用に反対する署名のお願い

現役医師によるドナネマブの保険適用に反対する署名のお願い
- 提出先:厚生労働省、中央社会保険医療協議会

活動詳細
■ はじめに(活動の目的や概要)
私達は、高額医薬品の保険適用にあたって、医薬品の費用対効果や医療保険財政の悪化の観点から、慎重に検討していく必要があると考えています。2024年11月13日、薬価収載されたアルツハイマー病治療薬「ドナネマブ」の保険適用に断固として反対するため、署名活動を行っています。
■ドナネマブとは?
ドナネマブ(販売名:ケンサラ)は、早期アルツハイマー病患者を対象の進行を遅らせる新薬として、注目されています。ドナネマブの年間治療費は、約308万円と高額な一方で、高齢者の自己負担の限度額は、低所得者では約年間10万円(低所得者Ⅰ・個人合算)となっており、残額は基本的に現役世代が負担する事となります。
海外の承認状況
例えば、米国では、2024年7月米国食品医薬品局(FDA)がドナネマブを承認しました。メディケア(高齢者向け公的医療)では、薬価の高さを問題視しており、ドナネマブを含むアルツハイマー病の治療薬に対し、かなり限定的な条件下で公費適用を行っています。
欧州連合(EU)では、欧州医薬品庁(EMA)による審査が行われていますが薬事承認も得られていません。英国の国立医療技術評価機構(NICE)は、2024年10月23日に発表したガイダンスの草案において、効果が限定的である事や長期的効果の不確実性等の観点から、費用対効果の観点から推奨しないと判断を示しています。
■ドナネマブの費用対効果
レカネマブの臨床第III相試験「Clarity AD」では、早期アルツハイマー病患者を対象としてレカネマブの有効性安全性を評価した結果、レカネマブ投与群はプラセボ群と比較して18か月後の臨床認知症評価尺度(CDR-SB)スコアの悪化を約27%抑制し、これは症状の進行を約7.5カ月遅らせる効果に相当するとしています。
ドナネマブの効果は限定的であり、長期的効果も不確実です。300万円以上の高額医療であるにもかかわらず、アルツハイマー病が治癒するわけではありません。また、介護の必要性を軽減する可能性がありますが、具体的な介護費用の削減効果に関する定量的データは現時点で限られています。評価が十分に行われずに、保険適用が行われているのです。
■医療保険財政の悪化
また、ドナネマブのような認知症薬に限らず、高齢者に対する医療保険適用については、費用対効果を踏まえた見直しを行うべきではないでしょうか。例えば、要介護者への侵襲のある手術や寝たきり患者への経管栄養等、健康余命を必ずしも延長する訳ではない診療について、保険適用を外すことについても検討を行うべきだと考えられます。
そもそも医療保険制度は実質的に破綻しており、負担は現役世代、給付は高齢者に偏った制度設計となっています。自己負担の割合は、現役世代が原則3割に対して、後期高齢者の多くは1割負担となっており、高額療養費(自己負担額の上限)についても、高齢者を優遇する制度となっており、「社会保険料の負担が高すぎ」と考えている現役世代の方も多いと思います。高齢者の自己負担を現役世代と同等にし、負担の世代間格差を縮小していくべきでしょう。
私たちの立場
私達は、ドナネマブを必要とする患者さんに届くことの重要性を理解しています。そのため、ドナネマブが薬事承認(薬剤が日本で使えるようになる)を受けたことには必ずしも反対の立場ではありません(治療費全額自己負担ということであれば許容)。しかし、費用対効果が明らかではない、あるいは限定的であることが想定される状況の中で、保険適用がなされ、しかもその給付が高額でかつ自己負担が極めて小さいことには反対の立場です。
私達は、ドナネマブの保険適用に反対するとともに、費用対効果に基づく保険適用の実施、高齢者の自己負担の引き上げや医療保険財政の適正化を強く求めます。
このような状況を踏まえ、私達はドナネマブの保険適用に反対するため、署名活動を開始しました。この署名を通じて、国や医療関係者に対し、慎重な検討を求めます。署名結果は、団体を通じて、厚生労働省や関係団体、国会議員等に提出する予定です。
皆さまのご理解とご協力をお願い申し上げます。賛同いただける方は、署名を行っていただくと共に、X(旧Twitter)等SNSでの拡散をお願いします。
■署名提出先とエールの利用方法
我々には署名提出の実績があります。
署名は現厚生労働大臣(福岡資麿)に直接渡す予定です(大臣の都合上、難しい場合は、厚生労働省の担当者に提出します)
さらに、厚生労働省の諮問機関であり、保険適用の承認を行う「中央社会保険医療協議会」にも提出します。
署名の提出には、交通費や印刷など、コストがかかりますので、エールで集めたお金を利用させていただきます。
その他、社会保障制度の問題に対しても、活動を行っていますので、利用させていただきます。
■エールの使用法
・印刷費
・交通費
・その他活動費や雑費
にあてさせて頂きます。皆様のお気持ちに心より感謝いたします。
発起人一覧
東徹(精神科医)
石川雅俊 (医師、政治家)